そらをあおぐ

 

 

林の中をぬけて、見上げた、青。

 

白い雲とのびてゆく木々に囲まれて

 

切れる息。

 

一羽の大きなカラスは凛としていた。

 

階段の前にまるで門番でもしているかのように、佇む。

 

優しさの中に凛々しさと強さと荒らさがあり、

 

瞳は私ではなく前を見ていた。

 

 

一礼。

 

 

あがる階段。

 

のぼる林道を。

 

 

機械音、雑踏、澄んだ空気、

劣等感、優越感に少しの恐怖。

 

 

淋しさよりも、

 

暗さの中に高揚と痛み。

 

 

赤い紅葉(もみじ)が色ずつく。

 

やさしいあしおと。

 

 

歩幅。

 

 

見上げた黄色、あか、オレンジ。

 

 

緑がゆれた。

 

時代が流れ移り変わっても

 

ひとは

 

生きてゆく。

 

 

この木々はナニをみてきただろうか?

 

 

過去人は

 

 

この紅葉(こうよう)を美しむ時間があっただろうか。

 

 

空を見上げて、時を待ち。

 

美しいねと緑を見上げる。

 

四季をたのしむ。

 

 

そんな緩やさでやさしく。

 

 

私たちは

 

ともに

 

「生きている」

 

と、実感できる大切な時間。

 

 

橋を渡るのではない。

 

橋を見下ろすのだ。

 

 

 

「落ちないために。」

 

 

 

呼吸を合わせるのではない。

 

言葉を捨てるんだ。

 

 

心を捨てない為に。

 

 

意味などなくて構わない。

 

意味などなくてもかまわない。

 

 

だから、

 

空を仰ぐ